ただ事実だけがある日々

事実と感想を切り分ける練習

根津神社にお参り:袖振り合うも多生の縁?

根津神社に行ってきた。

仕事を辞めてから、月に1,2回はどこかしらの神社に参拝している。

 

広い神社である。本殿のほか、西側には千本鳥居をくぐって向かう乙女稲荷、北川には駒込稲荷がある。平日の昼間だが、境内はそれなりに人気があった。

 

千本鳥居は小さく、低く、女性として平均的な背の高さの私ですら少し身をかがめて通る必要がある。さながらトンネルのようで、すれ違うにはお互い横向きになる必要があるほどの狭さだ。

外国人の2人組と鉢合わせる。鳥居が途切れるところで横によけ、待っていてくれた。

小走りになって切れ目まで行く。サンキューと言えず、目も合わせず無言で頭を下げる。向こうも少し頭を下げたように見える。

 

もう少し上ると、老夫婦とおぼしき男女が来る。

立ち止りかけると、「いいですよ、我々が退がります」と男性が言う。「いえいえ、そんな」と今度は声を出し、次に鳥居が途切れるところまで行って横によける。

「すみません」と笑顔になって老夫婦が通る。「どっちから進むのが正しいのか分からないわね」と女性が笑う。先ほどの外国人2人組には何も言葉をかけなかったことを思い出す。

 

鳥居の終点の駒込稲荷まで行くと、神職が祝詞を奉上していた。数人が見守っているので、その輪にそっと混じる。「かしこみかしこみ」と聞こえてくる。しばらく見物していると、お祓いをしてくれた。

 

蒸し暑いが、8月のような酷暑ではない。風が強く、木々を揺らして広い境内をどっと吹き渡る。腕を少し広げ、脇に風を通した。

ベンチのような石の上に、ぽつんとひとつ、松ぼっくりが置かれている。

 

境内には見どころが多い。ひととおり歩いて回ったが、『文豪の石』というものが見つからなかった。夏目漱石や森鴎外が参拝したときに腰を下ろしたという石だ。境内案内の看板を見に行く。帽子をかぶった高齢の男性とすれ違う。彼はそのまま松ぼっくりのある石のベンチに腰を下ろす。

看板によれば、手水鉢の横の道にあるらしい。通ってきた道だが、もう一度行ってみる。それらしき石が見つからないまま、行って返ってきた。

もう一度看板を確認して、はたと、高齢の男性が休憩している石が『文豪の石』なのだと気がつく。しげしげと彼を見る。彼は松ぼっくりのあったあたりに荷物を下ろし、スマホを横にして、何やら熱心にスワイプしていた。